こんにちは、図書館司書のこのみです。
公共図書館で児童サービスを担当し、母でもある司書のこのみがわらべうたの良さと必要性について解説します。
- 図書館勤務歴8年。公共図書館にて児童サービスを担当。
- 親子向けの、絵本の読み聞かせやわらべうたの講座の講師を担当。
- 現在、子育て中。母としても家庭で読み聞かせやわらべうたを実践。
図書館では、なぜおはなし会などでわらべうたを歌っているのですか?
わらべうたは絵本の導入に適しているからです。
わらべうたとは?
わらべうたについて辞書で調べると、このように出てきます。
昔から子供に歌いつがれてきた歌。また、子供に歌って聞かせる歌。遊びに伴うものが多い。手まり歌や数え歌など。
――(出典:デジタル大辞泉(小学館))
わらべうたは話し言葉にメロディが付いたものであり、口伝えの文学(=口承文学)、文学の原点とも言われています。
そして、わらべうたには、次の二種類があります。
- 子ども達が集団で遊ぶもの…「かごめかごめ」「はないちもんめ」
- 大人が赤ちゃんを遊ばせるあそばせうた
この記事では、後者のわらべうたについて解説します。
なぜ、わらべうたをうたう必要があるのか?
「あかちゃんに読み聞かせを始める前にすべき3つのこと」の記事でも書きましたが、絵本や読書を楽しめるようになるためには、まず親子の愛着関係を築き、「ことばの土台をつくる」ことが必要です。
そこで、ここからは、具体的にわらべうたを歌うメリットについて解説していきます。
わらべうたをうたうメリット4選
ことばの土台をつくる
図書館における児童サービスの世界では、「子どもの読書は耳から始まる。」と言われています。
どういうことかというと、子どもは身近な大人にたくさん言葉をかけてもらうことによって言葉を習得し、読書を楽しむ基盤を築いていくということです。
次の項目でも解説しますが、幼い頃のわらべうたは大人が子どもを慈しむ「あそばせうた」とも言われ、まさに身近な大人が子どもを愛おしみながら言葉をかけるという行為そのものです。
わらべうたは母語を育て、母語は子どもの生涯にわたる言語生活の基礎を築いていきます。
その意味で、わらべうたは親子のコミュニケーションに欠かせないものと言えるでしょう。
親子の愛着関係を育てる
乳幼児の情緒は、身近な人達の雰囲気や生活環境に左右されます。
大人が落ち着いて安定した気持ちでいると、子どもは安心して目と耳と心を開きます。
そして、赤ちゃんは、大人による「あそばせうた」を通じて、人との関わり方や言葉、身体機能を学ぶとともに、無条件の愛情や安心、安定、心地よさを感じ取っています。
前の項目でも述べたとおり、乳幼児向けのわらべうた(あそばせうた)は、親が子どもをいつくしむ歌です。
ぜひ、落ち着いた気持ちでゆったりとうたってみましょう。
絵本への導入がスムーズに
絵本を読む直前に、導入としてわらべうたを歌ってみましょう。
わらべうたで心とからだをリラックスすると、絵本の世界にもすっと馴染んでくれることが多いです。
小さな子どもでも歌いやすい
わらべうたは、話し言葉に節が付いたものであるため、日本語の抑揚が節になっています。
そのため、生活の様々な場面で自然に楽しめるような聞きなじみやすいメロディが多いことが特徴です。
そして、短くて音程差が少ないので、小さな子どもでも無理なく歌いやすいものが多く、覚えやすいことも小さな子どもと歌うのに適しています。
わらべうたをうたうときに気をつけること
目と目を合わせてゆっくりと
わらべうたは、親子のコミュニケーション手段であり、大衆の場で歌ったり場を盛り上げるような芸ではありません。
目の前の子どもと一対一になって、しっかり目を合わせて、ゆっくりと歌いましょう。
静かに穏やかに素朴に
無理におおげさにしたり、動きを激しくしすぎるのは控えておきましょう。
子どものリアクション欲しさに激しくしがちですが、いつもの声の大きさでゆったりと落ち着いた状態で歌うことで、子どもの安心感や心地よさが養われます。
同じ理由で、メロディや歌詞、しぐさもわざと変えて歌うことは控えましょう。
同じ歌を繰り返し
子どもは「知っていること」「期待通りに物事が運ぶこと」に安心感を抱きます。
新しいものをたくさん与えることの方が新鮮に思えるかもしれませんが、初めからたくさんの歌を歌うよりも、同じ歌を何度も繰り返し歌ってあげましょう。
何度も繰り返すうちに、歌や次の展開を覚えた子どもは、にっこりととても良い表情を見せてくれるようになります。
どんなわらべうたをうたうとよいか?
年齢に合っているもの
赤ちゃんに適したわらべうた
次のような特徴がものは、0~1歳の赤ちゃんに歌うのに適したわらべうたと言えます。
- 一曲が短い
- 言葉と動きが拍に合っている
- 音程差が小さい
- 身体に触れる遊びがある
特に最後の、「身体に触れる遊びがある」については、赤ちゃんのうちは、顔にさわる、抱っこしてゆらす、くすぐりあそび、ひざにのせるなどの遊びのあるものを取り入れてみましょう。
近年、皮膚からの刺激は、子どもの脳の発達に影響があることも分かってきています。積極的に触れ合い遊びを楽しみましょう。
幼児(2~3才)に適したわらべうた
- 指先を使うもの
- 足を使うもの
- 受け答えのあるもの
2~3才になると、片足立ちができるようになったり、5本の指をなめらかに動かせるようになったりと身体能力が大きく発達し、できるわらべうたの範囲が広がります。
これまでに歌ってきたわらべうたも繰り返し歌いつつ、新しいものも受け入れる体制が整っていれば、取り入れて楽しんでみましょう。
絵本や季節との関連性
絵本との関連性を意識する
例えば、食べ物の絵本と食べ物にまつわるわらべうた、お風呂の絵本とお風呂のわらべうた、ねんねの絵本と子守歌、など絵本と関連のあるものを取り入れるとよいです。
具体的には次のようなくみあわせです。
- 絵本『サンドイッチサンドイッチ』小西英子/作 + わらべうた「お皿におはし」
- 絵本『もりのおふろ』西村敏雄/作 + わらべうた「どんぶかっか」
- 絵本『おやすみなさいコッコさん』片山健/作・絵 + わらべうた「おやゆびねむれ」
ご家庭での読み聞かせの場合には、そこまで強く意識する必要もないかと思いますが、もし図書館などでおはなし会のプログラムを組む立場にある方は、少し意識してみるとよいと思います。
季節感を意識する
古くから歌い継がれてきたわらべうたは、生活の中で自然と発生したものであるため、生活に密着したものや季節感のあるものが多いのも特徴です。
自然のなかで四季を愛でるもの、またその移ろいを楽しむものも多く、昔の子どもは生活のなかで四季を自然と感じていたことが伺い知れます。
子どもの季節感を育むことは、豊かな心や、時間感覚の育成にもつながります。
ぜひ、季節感のあるわらべうたを取り入れて、季節を楽しみましょう。
まとめ:子どもを本好きにしたければ、まずわらべうたをうたおう
日本人は昔からわらべうたをたくさん歌って子育てをしてきました。
しかし、核家族化した現代では、これまでおじいさんやおばあさん、近所の高齢者などから伝えられてきたあそばせうたが伝わっていないという現状があります。
それでも、わらべうたの良さを伝えようと活動する人達や団体もたくさんあります。
図書館の「わらべうたの会」などもそのうちのひとつです。
わらべうたに興味のある方は、ぜひ、そういった地域の行事に参加して親子で楽しんでみましょう。
以上、図書館司書のこのみでした!
最後まで、読んでいただきありがとうございます^^
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