こんにちは、図書館司書のこのみです。
公共図書館で児童サービスを担当し、母でもある司書のこのみが妊娠中から持っておきたいおすすめの絵本について解説します。
- 図書館勤務歴8年。公共図書館にて児童サービスを担当。
- 親子向け読み聞かせ実践講座の講師の担当や、児童書にまつわるレファレンスサービスなどに従事。
- 現在、子育て中。一人の母としても家庭で読み聞かせを実践。
胎教におすすめの絵本はありますか?
妊娠中から生まれた後にも読めるおすすめの絵本をご紹介します。
絵本は生まれてから読むもの
結論から言うと、基本的に絵本は生まれてから子どもに読むものです。
児童文学や児童サービスを提供する立場としては、絵本は絵と文章から成る「総合芸術」であると捉えています。
良い絵本は絵がおはなしを語り、文章や文字への橋渡しをしてくれます。
大人は文字が読めて物語を理解できるため、文章のみでストーリーを追ってしまいがちですが、子どもにとっての絵は、大人にとっての文と同じ役割を果たしています。
そして、絵本の絵や文章はどれも、作家さんが細部まで丁寧にこだわりぬいて製作されています。
そのため、基本的には、絵本は絵と文の双方が合わさってこその「総合芸術」として、そのまま楽しむものだというのが図書館司書としての立場です。
妊娠中から読めるおすすめの1冊
とはいえ、妊娠中のお母さんは、「お腹の赤ちゃんにはたくさん声をかけてあげてくださいね。」と様々な場面で言われることが多いのではないでしょうか。
一般的に、赤ちゃんの聴覚器官は16~20週頃にかけて発達をはじめ、26週頃になると耳から捉えた振動を「音」として認識できるようになります。
そして、聴覚が発達すると、お父さんやお母さんの声を聞き分けることもできるようになると言われています。
そのため、胎教としてお腹の子にたくさん語りかけるようにという情報を目にすることも多いですが、目の前に見えない存在に語りかけるのは少し照れくさいですし、リアクションもないとどのように語りかけたらよいか分からない方も多いと思います。
そんな方におすすめなのが、絵本を活用するという方法です。
胎教としてお腹の子に語りかけるために、活用できる絵本をお探しの方にはこれがおすすめ!という絵本と、その理由について解説していきます。
『よくきたね』松野正子/ぶん、鎌田暢子/え(福音館書店)
「おいで おいで」とお母さんが子どもに呼びかけ、やってきた子どもに「よくきたね いいこだね」と語りかける、繰り返しの絵本です。
妊娠中におすすめの理由
文章が美しい
この絵本は、子どもに「おいで」と語りかける母親が、よちよちと自分の元にやってきた子に「よくきた」と優しく微笑むという展開が何度か繰り返されるストーリーです。
赤ちゃん絵本としての日本語の美しさについては後述しますが、この『よくきたね』の文章は、妊娠中に胎児に掛ける言葉としてもぴったりだと感じます。
文章のみで意味が通じる
先述のとおり、絵本は絵と文字から成る「総合芸術」です。
絵と文の両方があってこそ成り立つ作品形態のため、絵が語る部分が大きいのが特徴です。
特に赤ちゃん絵本はその傾向が強く、文のみで意味の通じる絵本はあまり多くありません。
たとえば、定番の「いないいないばあ」や、くりかえしの楽しい「がたんごとんがたんごとん」、擬音語擬態語の楽しい「じゃあじゃあびりびり」「ごぼごぼごぶごぶ」などは、どれも非常にポピュラーで良い絵本であるからこそ、絵が語る部分が多く、文のみでは意味は通じにくいです。
前提として、文章で説明しすぎている絵本や、絵と文がマッチしていない絵本は評価しがたいものですが、絵と文が合っており、かつ文のみである程度意味が通じてその様子を想像できる「良い絵本」はとても少ないと個人的には思っています。
そんな条件を満たす、貴重な絵本がこの『よくきたね』だと、個人的には感じています。
おかあさんのところに「よくきたね」
この「よくきたね」という言葉こそが、胎児に語りかけるのにぴったりです。
皆さんは、お腹の子に語りかけるとき、どんな言葉をかけていますか?
「お父さんだよー」「お母さんだよー」「〇〇ちゃん、聞こえるかな?」など、それぞれ思い思いに声をかけているかと思います。
私自身は、妊娠中にお腹の子に伝えたかった言葉は「来てくれてありがとう」でした。
まさに、「おかあさんのところに、”よくきたね”。ありがとう」。
そんな思いを込めて読むことができる絵本です。
生まれてからもおすすめの理由
文章が美しい
くりかえし
良い赤ちゃん絵本の特徴として、「くりかえし」があることはとても重要なポイントのひとつです。
赤ちゃんは、知っていることに安心感を覚えます。
そのため、赤ちゃん絵本には「くりかえし」の展開が多く、期待したとおりに物事が起こる安心感が得られるということがとても大事なポイントとなってきます。
素朴であたたかい語りかけ
「おいで」や「よくきたね」、「いいこ」という言葉は、日常的に自然と子どもに対して語りかける言葉のひとつだと思います。
特に、ハイハイやよちよち歩きをしはじめ、移動ができるようになった子に語りかけやすい言葉です。
そして、素朴ではありますが、子どもを愛おしく思うときに出てくるとても愛情深い言葉です。
こういったたわいもないけれど愛情深い言葉こそ、丁寧に何度も子どもにかけてあげたいものです。
絵が美しい
身近な動物と人間の親子
子どもが幼いころに覚えやすい動物(いぬ、ねこ、ぶた、くま)が出てきて、最後、人間の親子が登場します。
こういったメジャーな動物によるくりかえしのあと、最後に等身大の人間の親子が登場するという展開は、良い赤ちゃん絵本によくあるパターンです。
最後に、等身大の人間の親子が登場することで、絵本の世界での事柄を自分事としてとらえることができたり、絵本の世界から現実世界への切り替えの役割を果たすことができます。
写実的で優しい
絵本の登場キャラがアニメや漫画のキャラクターのようにデフォルメされすぎていないというのも、良い赤ちゃん絵本を選ぶ大事なポイントです。
その点で、『よくきたね』の絵は写実的でありながら、誇張されすぎない優しい表情が魅力的です。
淡い色彩
淡い色彩がより優しい印象を与えます。
ただし、赤ちゃんに読み聞かせをするには、5か月以降の目がしっかり見えるようになってからがふさわしいです。
月齢の低い赤ちゃんは目がはっきり見えていないため、パステルカラーなどの優しい色合いのものよりも、色のはっきりとした絵本の方がよいと言われています。
最後に登場する人間の子もよちよち歩きの赤ちゃんですね。
親としっかり目が合い、絵本の絵がしっかり見えてきたなと感じた頃に読んであげましょう。
おまけ:『りんご』松野正子/ぶん、鎌田暢子/え(童心社)
同じ作者コンビの作品です。
こちらも言わずもがなポピュラーな絵本ですが、りんごの始まりから終わりまで、まるっとりんごを楽しめる1冊で、赤ちゃん絵本やプレゼントとしてもおすすめです。
まとめ:妊娠中から読める絵本を探しているならコレ
今回は、妊娠中から読める絵本の紹介とその理由について解説しました。
今回のポイントは、以下のとおりです。
胎教として絵本を読むことは、
生まれてからの絵本の読み聞かせの練習にもなりますし、
お腹の子に直接語りかけるよりも、照れくささもなんとなく軽減される気がします。
以上、図書館司書のこのみでした!
最後まで、読んでいただきありがとうございます^^
コメント